森田英明先生(令和4年度受賞)

受賞論文

Induction of human regulatory innate lymphoid cells from group 2 innate lymphoid cells by retinoic acid.
J Allergy Clin Immunol 2019; 143: 2190-201.

受賞者

森田 英明 先生

  • 医学博士
    • 日本小児科学会認定小児科指導医
    • 日本アレルギー学会 専門医・指導医
  • 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
    • 免疫アレルギー・感染研究部 アレルギー研究室 室長
    • アレルギーセンター 免疫機能評価支援室 室長(併任)

論文要旨

2型自然リンパ球(ILC2)は、上皮細胞等の周囲の細胞が産生するサイトカイン等により活性化され、抗原非特異的に大量の2型サイトカインを産生することでアレルギー性炎症を惹起することが知られています。本論文では、LC2がビタミンAの代謝産物であるレチノイン酸で刺激されると炎症抑制性サイトカインであるIL-10を産生する細胞(IL-10産生性ILC)に変化し、炎症を抑制することを明らかにしました。更に、このIL-10産生性ILCは、炎症のない健常人の鼻組織には存在せず、好酸球性副鼻腔炎患者の炎症鼻組織で誘導されていることや、気道上皮細胞が2型サイトカインであるIL-13に反応してレチノイン酸を合成することでIL-10産生性ILCの誘導に関与している可能性も明らかにしました。これらのメカニズムは、過度な組織炎症を回避し、気道の恒常性を維持するための生体に備わった負のフィードバックシステムの一部である可能性があります。また、これらのメカニズムの詳細を明らかにすることはアレルギーの新たな治療標的の創出につながる可能性があります。

謝辞

この度は、奥田記念花粉症等学術顕彰財団学術賞に選出いただけましたこと、大変光栄に存じます。審査員の先生方、本研究にご協力いただきました共同研究者の方々に心より御礼申し上げます。研究成果を社会に還元できるように、より一層精進して参りたいと存じます。

追記

令和5年度の花粉症学等学術顕彰財団の総会が開かれ、総会と令和4年度顕彰受賞式を行いました。

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