論文要旨
近年、Th2細胞の中にアレルギー性鼻炎を含む慢性炎症疾患において病態形成に関わるとされる亜集団、Pathogenic Th2細胞の存在の重要性が提唱されている。本研究では、ダニ舌下錠を用いた大規模プラセボ対照二重盲検比較第III相試験に参加したダニアレルギー性鼻炎患者89例を対象として、末梢血T細胞のサブセットを解析した。ST2はダニや花粉などの刺激により障害を受けた気道上皮細胞の核内から放出されるIL-33に対するレセプターとしてアレルギー性鼻炎との関連が指摘されている。本研究では、ダニ抗原に特異的に反応したCD4 T細胞中の割合に注目し解析することで、ST2陽性細胞に加えて、Th2サイトカインを産生するCD27-CD161+細胞の割合が、実薬群、特に治療効果有効群において有意に増加することが分かった。さらにこれらの数値の変動は自覚症状とも相関した。これらの結果から、この細胞集団の変動はTh2サイトカイン産生細胞数の変化などの従来のマーカーと比較して、自覚症状、舌下免疫療法の治療効果をより正確に反映すると考えられ、プラセボ効果を含まない客観的効果判定マーカーとして有効と考える。
謝辞
この度、名誉ある奥田財団花粉症学等学術顕彰財団学術賞をいただきましたことに厚い感謝・御礼を申し上げます。また、本研究を行うにあたり温かいご指導をいただきました岡本美孝先生に感謝いたします。この受賞に恥じぬよう、より良い研究に向かって邁進いたします。